今でも、ふとした瞬間に、あの稜線を思い出すことがあります。
風の音、足元の感覚、遠くまで続いていた空。「よく歩いたな」と、今になって思います。
正直に言うと、大雪山縦走は、私にとって簡単な山行ではありませんでした。それでも、あの時に最後まで歩き切ったという記憶が、今の登山を続けるうえで、小さな支えになっています。
今回は、その大雪山縦走のことを書いてみようと思います。
なぜ大雪山縦走に行こうと思ったのか
きっかけは登山系youtubeです。本州では体験できない絶景やワクワク感。
しかし情報を調べてみると経験レベルがかなり高く、気合を入れ、色々なリスクを想像しながら何度も考えました。その作業も怖さではなく気持ちがワクワク楽しかった記憶があります。
当時の私は58歳で、登山歴は2年ほどでした。今回は一人で、歩いたルートはトムラウシ登山口〜黒岳まで、3泊4日のテント泊です。
出発前は不安もあった
大雪山縦走が、気軽に挑戦できる山でないことは、自分でも分かっていました。
体力のこと、天候のこと、荷物のこと、そして一人で歩くことへの不安。考え出すと、きりがありませんでした。
出発前から、私の体力の限界(身体は比較的小柄)、20kgを背負い歩き続ける、悪天候経験がない、道迷い、40kmの初めての経験、熊への知識、ということは、正直なところずっと頭にありました。
だからこそ、勢いだけで出発することはしませんでした。装備を見直し、ルートを何度も確認し、天候の情報を集めました。熊への備えについても、事前にできる限りのことをしておきたいと思いました。(このあたりの考え方は👇【熊対策の最低限装備5つ|60代女性のソロ登山で外せない持ち物】にもまとめています。)

長期の山行になるので、行き先と予定日程は、出発前に家族にもきちんと伝えておきました。

不安を消してから出発したわけではありません。不安を抱えたまま、それでも準備を重ねて、出発の日を迎えました。
実際に歩いて感じた大雪山の素晴らしさ
歩き始めてから、大雪山の景色には何度も足を止められました。
特に感動したのは、ひたすら続く素晴らしい稜線です。

忘れられない場所は、トムラウシ公園でした。

ふっと岩の上に2匹のリスが出てきて チラッと私を見て隠れたのが、今でも目に浮かびます。立ち止まって見た景色の中でも、特に忠別岳〜白雲岳の稜線は忘れられません。

今でも覚えているのは、トムラウシ登山口から歩き始めてしばらくするとエゾ雷鳥が登山道の上から私を見ていて私が歩くエゾ雷鳥も歩く。。まるで(こっちよ)って道案内してくれているようでした。
北海道の大自然、というひとことでは言い表せない、あの場所でしか感じられなかった空気があったように思います。
楽しいだけではなかった
もちろん、楽しい場面ばかりではありませんでした。
疲れを強く感じたのは、登山口からトムラウシ公園までの急登でした。
一番ヒヤッとした出来事は木道が濡れていて後ろ向きに転倒しザックがクッションとなり頭を守ることができました。ただ左足が変に捻れてしまい(折れたか?歩けるか?)と頭に(遭難)という2文字がチラつきました。幸い痛みはあるもののゆっくり歩くことはできましたが、足がつらくなったのは、最終日の黒岳、最後のピークあたりだったと思います。


2日目の天候も立っているのがやっとの強風とガスがあり、そのときは稜線上で少し不安になりました。「ここはもう少し頑張らなければ」と思ったのは南沼キャンプ場から忠別岳避難小屋までの登山道でした。
風もおさまり休憩のときは、大きな岩にザックをクッションにそのまま寝そべって空を何も考えずに眺める。。そうやって一つひとつ乗り越えながら、少しずつ前に進んでいきました。

苦しい場面があったからこそ、最後まで歩き切ったときの気持ちが、今も強く残っているのだと思います。
歩き終えた時に感じたこと
歩き終えた時は大げさに達成感に浸ったというより、まずはほっとした気持ちが大きかったように思います。無事に終わったこと、よく歩いたこと、そして少し疲れていたこと。そのすべてが、今でも記憶に残っています。
あの山行が今の私の自信になっている
大雪山縦走を歩き終えたからといって、自分が強い登山者になったとは思っていません。今でも、体力にも技術にも、それほど自信があるわけではありません。
それでも、今、登山中に少し不安になったとき、「あの大雪山を歩いたんだから」と、心の中で思い出すことがあります。
それは「だからどんな山でも行ける」という意味ではありません。むしろ逆で、あの経験があったからこそ、自分の限界を前より意識するようになりました。準備をすること、体力を過信しないこと、そして状況によっては引き返す判断を大切にすること。
大雪山縦走は、私に自信をくれたと同時に、無理をしないことの大切さも教えてくれた山行でした。
60代になった今、大雪山縦走をどう思うか
今この年齢になって振り返ると、同じことがまたできるのかと感じます。
当時の自分については、山の本当の怖さを知らなかったと思います。年齢を重ねた今、山との向き合い方は(登りたい山)ではなく(登れる山)に変わってきました。
大雪山縦走をこれから歩きたい人へ
大雪山縦走は、私にとって簡単な山行ではありませんでした。そのため、「誰でも歩けます」とは言えません。
それでも、自分の経験から感じたことをお伝えするなら、自分の体力を知ること、余裕を持った計画を立てること、天候をよく確認すること、装備と事前準備を怠らないこと、そして無理をせず、状況によっては撤退する判断を持っておくことが、とても大切だと思います。
登山道や交通、山小屋、ヒグマの出没状況、気象情報などは年々変わります。実際に歩かれる方は、必ず最新の公式情報をご自身で確認してください
まとめ
大雪山縦走は、私にとって簡単な山行ではありませんでした。だからこそ、最後まで歩けたという経験が、今も自分の中に残っています。
「あの時の私は、最後まで歩いた」
その記憶は、今の私にとって、小さいけれど確かな自信になっています。
あの時の感動をもう一度。私もまた、自分にできる準備をしながら山を歩いていきたいと思います。


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